ゲーミフィケーションとユーザ体験(UX)

私が「ゲーミフィケーション」という言葉に触れたのは、JaSST'13東北の基調講演「開発を楽しくするソフトウェアテスト」で湯本さんが取り上げたのを聴いたのが最初です。その後もこの用語をたびたび聞くことがありましたが、今年のJaSST'15東北終了後の”みちのくツアー(笑)”でJaSST'15東北実行委員長の根本さんがゲーミフィケーションのワークをやってくれましたので今回取り上げました。

 

ゲーミフィケーションとは、さまざまな活動にゲーム的な要素を取り入れ、関わる人たちがイキイキと楽しく活動できるようにするのが狙いです。

例えば、定型的な事務作業などを継続していくと次第に飽きてきますよね。

すると眠くなったり、注意散漫になると間違いも増えるし生産性もあがらない。

そこにゲーム的な要素を導入することで、誤りが減り、生産性もあがり、飽きっぽい仕事を楽しく取り組めるなどの効果が期待できます。

 

そういえば2001年頃に「フィッシュ!―鮮度100%ぴちぴちオフィスのつくり方」という書籍を読みました。

この本、130ページほどで、楽しい内容なのであっという間に読めてしまいます。(きっと今なら中古本もあると思う)

シアトルの「パイク・プレイス魚市場」を題材に、毎日ワイワイ魚が飛び交い、市場に来てくれた方がさまざまな楽しいアトラクションやゲームに参加してもらうなど、1日の多くの時間を占める「仕事」をお客さんと一緒に積極的に楽しみ、職場に活気を与える具体的な方法が寓話として書かれていました。実はこの本の事例を参考に、組織的な改善活動のしくみを検討し、実践した経緯もあります。

この本が出た当時はまだ「ゲーミフィケーション」という言葉は普及していませんでしたが、狙いは一緒ではないかと思います。


そして最近ユーザビリティ方面で定着した重要な概念の一つが「ユーザ体験(UX)」です。

人間中心設計HCD(Human Centered Design)とほぼ同義と言われる概念で、(ざっくりではありますがw)ユーザがシステムを使う際にどのようなイメージをいだき、感じ、体験するのかを設計・実装し、提供すること。もちろんわざわざ嫌な思いをするように設計することではなく(笑)、「ユーザがよりよい体験ができるシステムづくり」を目指します。

これ、ゲーミフィケーションと同じ方向性を持つ概念だなぁと思うのです。

 

UXは主にシステムをデザインする際に活用されますが、自分の仕事や組織の仕事(これも一つのシステム!)をデザインするために活用することも可能ですよね。

プロジェクト・業務に一生懸命取り組むことも重要ですが、その取り組みそのものにも「楽しさ」や「うれしさ」がもっとあってよいと思いませんか?

難しい顔をしてWBSを洗い出し、それぞれのタスクをメンバーに割り当て、実直に実践するだけではなく、どうすればメンバーが楽しく同じゴールに向かうことができるのかをゲーミフィケーションやユーザ体験のノウハウを活用してデザインし、実践するようなプロジェクト(計画立案・実践)があってもよいのではないかと考えます。


また、最近ではゲーミフィケーションを活用して実務を楽しく変えようとする人が増えているのはとてもうれしいことである一方で、誰かにしかけられないと仕事の仕方や意欲を変えられない受身なエンジニアや管理者が多いというのはどうしたものかとも思っています。

自分の仕事とそのやり方は自ら考えて作る。そしてやってみた結果からさらに楽しく、良い成果が上がるように見直し続ける。

その経験を活かして顧客の仕事や実務を楽しく、より成果が上がるように(UX)デザインし、実装する。

最終的には各自が自らの仕事を楽しくしつづける能動的なエンジニアが増えるのを期待したいですね。